ボディビル競技のレジェンド【山岸秀匡・やまぎし ひでただ】の歴史に筋肉記者(アナスペ)が迫る。スペシャルインタビュー「日本人レジェンドの歩み」
<聞き手=アナスペ>

このページが一番最初だという方は、「ボディビルとの出会い・アマチュア時代」「プロデビュー戦・ミロシュコーチとの出会い」「当時のプロ選手の金銭事情や契約内容」を見ていただくと、より楽しめる内容になっております!こちらの記事と合わせてご覧ください。
逆境を乗り越えられた大きな理由とは

金銭的な事もそうですし、プロになってから最初は不安があって恥ずかしいと言う思いがあったと思うんですけど
「どうしてそこまで自分の事を(出来るんだ)って信じられたのか」お伺いしてもいいですか?

「信じてはいなかったね」さっきも言ったように俺がOLYMPIAに行けるとは思ってなかったからね
現実を見た時に「俺はこれは無理でしょ」と思ったんだけど、ミロシュに出会ってそれが変わって、2006年にミロシュと出会った時に「HIDEは、OLYMPIAに出ます!」ってファンに宣言したわけ


その時に俺はマズイ事を言ったなと「俺はまだちょっと早いでしょ」と正直思ったんだよね
その時、俺はOLYMPIAに出れると言う感覚はあったけれども「次の年っていうのはなかった、俺の中では」ただそれを言われたからには、有言実行でやるしかないって事でミロシュも凄いトレーニングをしだして、2006年から始めて2007年のIRONMAN PRO(アイアンマン・プロ)で仕上げた俺の身体は「これは行くな」って言うのはあったね
「写真を見て驚いたんだよね」これは俺の身体だって思えないほどすごい身体だって


「今でもその2007年の仕上がりは、今までの仕上がりのトップ3に入るような身体」って思ってるんだけれども
当時はわからないからさぁ、もっとこれ以上良くなると思ってたけど、やっぱり今考えると「最初の3,4年が俺のピーク」
色んなボディビルダーに聞いても、サイズは後の方がついたかもしれないけど、やっぱ身体がフレッシュな時が「身体の張りというかステージに立った時の力強さがピーク」なんだよね

山岸さん、フリーポーズの時「プライド」の曲でダンダンダンシャーってやるじゃないですか
このシャーがカッコ良すぎて大好きでこのシーンを巻き戻して何回も見てます 笑


そこら辺の時は「オリンピアとアーノルドに出るのが当たり前」っていう考えに変わったんだよね
他のショーには目がなかった。出ないといけないんだけどね、勿論他のショーにも出てクオリファイしないといけないんだけど、この二つに関しては毎年出るものだと前提でいた

ミロシュさんとの出会いで色々変わったって事ですよね
「OLYMPIAにHIDEは出る」って事をミロシュが言って、それもある意味エンジンになったって言うか



ミロシュさんって今もREGAN GRIMES(リーガング・ライムス)を見ていて「3年以内にミスターオリンピアにする」って宣言してるじゃないですか
元々、じゃあ昔から「HIDEはOLYMPIAに出す」とか、そういう事がずっとあってそれを実現させてきたコーチっていう事ですよね

IFBBによって毎年開催される国際的なボディビル大会。プロ・ボディビルの世界最高峰とされる。


プロモーターとしての山岸さんの思い

現在、プロモーターとしても活動されていて、日本ではまだプロの大会とかプロクオリファイの大会が開催されなかった時に、そこで山岸さんがプロモーターとして日本に大会を持ってきてくれて
プロモーターとしてどんな想いで日本に大会を持ってきてるんですか?

これはまぁ時代背景もあって、IFBB全体って言うのは、カナダのJOE WEIDER(ジョー・ウイダー)、BEN WEIDER(ベン・ウイダー)がいて弟のBENが統括してたんだよね。
それがBEN WEIDERが亡くなってIFBBの2番手だった人がスペインのRAFAEL SANTONJA(ラファエル・サントンハ)


俺がIFBBのユニバースとか出てた時は、BEN WEIDERとRAFAEL SANTONJAが全部やってたわけ、
それでアメリカの方はNPCでJIM MANION(ジム・マニオン)がずっとやってたんだけれども


それで要するに、BEN WEIDERがいなくなってRAFAEL SANTONJAとJIM MANIONが分裂しちゃうわけだな

だから、「アメリカのNPCを中心とする(IFBB PROFESSIONAL LEAGUE)」というところと「スペインの(IFBB ELITE PRO)」で二つにわかれて、日本のJBBFはスペインのELITEの方に行ったわけだよね。
これでこっちのIFBB PROFESSIONAL LEAGUEというところは日本と繋がりがなくなっちゃったわけ「そこで日本でやりましょう!」って言ったのが今のFWJなんだよね

なので、俺がプロになった当時は「プロクオリファイヤー」っていうアメリカ形式でやっていて、アメリカっていうのはミスターUSAとかさぁナショナルズのプロクオリファイヤーじゃない
だけど他の国にはそういうのはなかったわけ、だからプロになるのがちょっとグレーだった訳だな
その国によって違ったからね。だからそれをアメリカ主導のNPC(IFBB PROFESSIONAL LEAGUE)を世界中に広めて、明確にプロクオリファイヤーをやって「これに勝ったらプロですよ」と言うように簡潔化しようという事でそれを日本に持ってきた訳
今の選手に思うこと・・・

プロカードが誕生しやすい環境を山岸さんが整えて、それで日本人でもプロカードがどんどん発行されるようになって
「プロのリーグでも活躍する」っていう事を目標にしている選手が増えていると思うんですけど、その人達に対して山岸さんが思う事はありますか?

それぞれ目標があると思うんだけれども、「プロカードをとって終わりだったらそれはそれでいいんだけど」やっぱり普通は、プロになったら世界のプロの選手に混ざって活躍したいと流れで言ったら普通はそうだよね
そうなると今、どこの国でもそうなんだけどプロクオリファイヤーの数が多いから選手がバラけてる訳だな。後、プロカードがいっぱい発行されると言う事はどんどんプロになるので、アマチュアの層がやや薄くなってきていると
だから、アマチュアで揉まれないでプロになると、これは俺が最初プロになった時みたいに惨めな思いをするしかない。

やっぱり選手としてやってるからには、いっぱいコールアウトされて「戦ってるんだ」と言う実感があるからやってるわけでしょ
俺なんかずっと学生の時から、その感情を味わってるのが楽しくて、恐らくこれが最初からその他大勢だったら俺はやってなかったと思うの、楽しさがわからなかったと思う。身体を作ると言う意味では、ボディビルコンテストに出る必要はなかった。
俺は、ボディビルダーだからそのステージのライトを浴びるのが好きだったからね、そこで戦えなかったら面白くないわけじゃない

今の制度になる前までは、アマチュアで相当揉まれないとプロになれないから
だから今の選手は、しっかりと実力をつけなくちゃいけない。


だから「プロになったら直ぐに通用しますよ」と言うか、一昔前は実力を備えた選手しかプロになれなかったんだけど、今はそうではないので
「ボディビルを長く続けてやりたい」って言う人の場合、どうするのかなって言うのはあるよね、俺としてはやっぱり。だから、別にアマチュアに戻っても良いわけなんだけども、プロでやると言うからには実力をつけてからプロカードをとってほしいと言うかね。
そうは言ってもプロの数が増えてもプロの頂点のOLYMPIAに出れると言うのは「99%の人は到達しない」

その舞台には1%の選ばれた人しか行けないので、これはエリートである事には変わりはない
今日本からもプロが出てきてるんだけれども、彼らにも勿論頑張ってほしいという気持ちはあるよね

今回は、本当にこのような貴重な機会をいただきありがとうございました!
楽しいお話がたくさん聞けて、僕もボディビルをもっと大好きでもっと頑張ろうと思いました。



